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1988年「Days Japan」連載 『コメの話』より
アメリカのコメ(1)
日本人は外圧に滅法ヨワイという噂があります。
外国からプラッフィング(脅し)をかけられると、ぼやきながらもアチラの言うことをきいてしまうという気の弱いところがあるらしい。
たしかにそういう哀しい癖があるのかもしれませんね。
100要求したければまず200吹っかけるというプラッフィングが欧米流外交の基本テクニックだと知っていながら、そのときになるともうどうにもならない。
とくに相手が自分より強いとみると、反論すべきは反論するという外交術のABCを忘れて、必要以上にへりくだり、相手の無理な註文にずるずると嵌ってしまうところがある。
長いものには巻かれろだの、泣く子と地頭には勝てぬだのという諺を重宝してきたせいで、そんな癖がついたのでしょうか。
この先、何十年かかろうとも、
自分の意見をちゃんと持ち、
それをおごらず、またへりくだらず、
静かに微笑しながら主張し、
相手の主張にもよく耳を貸して、
自分の意見に改めるべきところがあれば改め、
同じことを相手にも要求する、
そういう温和だが勁い国民になるよう修業せねばならないでしょうが、それはとにかくとして、いまとても口惜しいのは、「日本人は外圧に滅法ヨワイ」というのを巧妙に使ってコメの自由化を目論んでいるのが、同じ日本人だという事実で、味方から背中にズドンと一発、鉄砲玉をうたれたぐらい口惜しい。
コメは日本農業の根幹です。
国内で丁寧に議論を積み重ねて、必要とあれば総選挙なり国民投票なりで民意を問い、その上で「自分の意見」をちゃんと持って相手と交渉するのが作法でしょう。
『コメの話』(新潮文庫)に収録
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